品川区を中心に、子ども・保護者のサポートを通じて「その子らしさ」が尊重され、安心して暮らせるような地域社会の実現を目指す一般社団法人でっこぼっこ。活動への想いや活動内容について代表理事の駒崎圭子(こまざき けいこ)さんにお話を伺いました。
でこぼこな個性があるのは当たり前。子育ての「困った」を解決する地域の保育士。
__駒崎さんの生い立ちや、「でっこぼっこ」を立ち上げた経緯についてお聞かせください。
駒崎さん(以下、駒崎):生まれてから10年程大崎におり、都内で何度か引越しをして、20歳を過ぎてまた大崎に戻ってきました。もともと保育や幼児教育に興味があったので、品川区の保育園で保育補助のアルバイトを経験しました。品川区の保育園のうち17箇所でアルバイトをし、保育士のやりがいや、園の環境や方針によって保育方法が全く異なることがわかりました。それから保育士の資格を取り、ぷりすくーる西五反田で保育士として約10年間働きました。その後、産休に入ったことで、地域で子育てする方々の現状を間近で感じることができました。誰だって最初はおむつの裏表や子どもへの話しかけ方、遊び方がわからないんです。子どもを預かる保育園だけではなく、ちょっとした疑問や不安を相談できる「地域の保育士」が必要だと気づきました。その後、様々な団体を通じて品川区の保育・幼児教育に関する活動をしておりましたが、行政とも連携して地域全体で子育てを支援するために立ち上げたのが一般社団法人でっこぼっこです。
__「でっこぼっこ」という団体名は、思わず口にしたくなるようなネーミングですよね。
駒崎:誰でも読むことができ、柔らかい雰囲気にしたかったので平仮名にするということは最初に決めました。得意・不得意は子どもそれぞれで、でこぼこじゃない人はいないと感じていたのと、立ち上げ時のメンバー2名のうち、私は身長が高く、もう1名は小柄だったこともあり「でこぼこ」がいいねという話になりました。明るく楽しくポップな感じにしたかったので、ちいさい「つ」を入れて「でっこぼっこ」になりました。
__次に、「でっこぼっこ」の活動内容についてお伺いします。「宿題あそび」という放課後学習支援をされていますよね。
駒崎:「宿題あそび」はコロナ禍でスタートした支援です。休校になってしまい学校で授業を受けることはないけれど、宿題はたくさん出て、提出期限は決まっていました。学校の授業に遅れないように宿題を見てあげたいと思う保護者の方自身も、どうやって教えてあげたらいいかわからないし、仕事や家事だってしなきゃいけない。そんな相談が増えて、「宿題を見ることであれば私たちも何か力になれるかもしれない」と思い、まずは始めてみました。実際に宿題に取り組む子ども達を見て、「宿題ができない」のは入り口であって、文字を捉えるのが苦手な子、音読が苦手な子など、子どもによって宿題の何に困っているかが違うことがわかり、その子に合った学習方法を見つけることが大切だと感じました。宿題の目的は家庭学習の習慣を身につけることです。学校の宿題が得意な子もいれば、苦手な子もいるのは当たり前のことです。全員一緒の宿題だと自分の子と他の子を比較してしまい、「うちの子って…」と保護者の方が悩んでしまうのも仕方ないことだと思います。
机に向かうだけでなく、遊びの中で学べることもたくさんあります。例えば、500円を持ってスーパーに行って、これで食材がどれだけ買えるか実際に買い物をしてもらうことがあります。子ども達が協力して計算することで勉強になるんです。
宿題に意欲的でなかったり間違いが多い子どもに対して、つい大人は「真面目にやりなさい」「よく見なさい」などと言ってしまいがちですが、子ども達は、宿題に対して真面目に一生懸命向き合っていることが多いです。大人のイメージや先入観で判断するのではなく、大人の「困った」と子どもの「困った」を分けて考えることで、宿題やテストの中からこそ発見できる子どもの「苦手」や「わからない」に気付けると良いと思います。
宿題が難しい子には私も一緒に学校に相談して、宿題を調整してもらうこともあります。得意・不得意は誰にでもあって当たり前なので、それらを理解して得意なところを伸ばしながら、苦手なことに活かしていけるサポートができればと思います。当初、宿題あそびの対象は小学校低学年の子どもを想定していましたが、実際は年長さんから中学生まで通っています。年齢に関係なく、今後も宿題あそびは続ける予定です。
__ありがとうございます。その他にはどのような活動をしていらっしゃいますか?
駒崎:現在はお休み中ですが、「遊んで休んで」が由来の「あそやす」という活動があります。小学生向けの室内プレーパークのようなものです。家では怒られてしまうようなことも自由に遊べる場所です。例えば、輪ゴムを繋げて室内に張り巡らせ、その輪ゴムに当たらないように移動したり、風船に水を入れてハサミで切った瞬間をタイムラプスで撮影してみたり…子ども自身が興味を持ったことを実際に試して遊べる場です。
また、「目黒川Kids Fes」という赤ちゃんから大人まで「遊び」を通して繋がり楽しめるイベントをE-Park実行委員会と共同で開催しています。子どもも大人も五感を使って体験できることを大切にしているイベントです。2023年11月に3回目を開催しましたが、子どもだけでなく保護者の方からも「ここまで子どもが主体になって考えて進められるイベントがあるなんて嬉しい」と喜んでいただけるため、第4回以降も開催したいと考えています。
子ども達で運営する企画「キッズアイディアマーケット」は、子ども達の手作りのものやアイディアを「どのように」「いくらで」販売するか決め、子ども達が試行錯誤しながら自分たちでお店を運営します。多くの子どもたちに経験してもらえるよう、今後も様々な場所で開催したいです。
「気になる!」で繋がり、苦手を補い合える地域に。
__「でっこぼっこ」の活動で関わる方からはどのような声をいただきますか?
駒崎:子ども達は楽しくても「楽しい」とは言いません。「次いつやるの?」と聞かれるのが一番嬉しいです。楽しかったからまた来たいと思ってくれたんだなと実感します。宿題あそびに通う子どもの保護者の方とは定期的に面談しているのですが、最初は自分の子どもについて話すことに消極的だった方も、お子さんの良いところをたくさん言ってくれるようになるんです。でこぼこがあるのは当たり前で、そんなお子さんについて理解を深め、良いところをたくさん発見できたのだと思います。地域の方からも興味を持っていただいたり、応援として寄付をしていただくこともあります。活動について知っていただき、興味を持っていただけることが嬉しいです。
__駒崎さんは、品川区がどのような地域であってほしいと考えますか?
駒崎:子どもから大人まで皆が楽しくて自分らしくいられる、困ったときや辛いときに「一人で頑張らなくちゃ」と思わなくてもいい地域です。そのためには、自分の状況を理解して助けを求める受援力(じゅえんりょく)を子どものうちから身につけてほしいと思います。得意・不得意があることは当たり前だと認めることで、苦手なことをお互いに補い合える地域であってほしいと思います。
__最後に、駒崎さんからメッセージをお願いいたします!
駒崎:私も皆さんも、1人でできることには限りがあると思います。でも、個人同士が繋がれば、みんなでできることが増えるはず。そのためには「気になる!」と声に出すことが大切です。私たちに少しでも興味のある方とはお話ししたいです!品川区の色々なところに顔を出していますので、ぜひ声をかけてください!
(古郡 優)