食事を通して地域を繋ぐ「まるごはんこども食堂」

食事を通して地域を繋ぐ「まるごはんこども食堂」
地域共創(大崎×五反田LINK独自記事)

「カスタリア目黒かむろ坂」にて月に1度、「まるごはんこども食堂」が開催されています。自然栽培の野菜を使い、食材を活かした料理はもちろんのこと、来た人がほっとできる家のような空間には、こどもだけでなく大人のファンも多いのだそう。今回は「まるごはんこども食堂」主催の宇關裕子(うぜき ひろこ)さん、広報の山品千尋(やましな ちひろ)さん、「カスタリア目黒かむろ坂」の運用を行なっている大和ハウス・アセットマネジメント株式会社のご担当者、管理会社である株式会社モリモトクオリティのご担当者にお話を伺いました。

こどもも大人も一緒に、皆で食卓を囲む大切さ

__お2人はこども食堂をはじめる前から「食」に関する仕事をされているんですよね。

宇關さん:私は3年前まで製造業の会社員でした。朝早くから夜遅くまで働きながら子育てをする中で、家庭を優先できる仕事に就くことを決意しました。私自身が働きながら家事をすることが大変だった経験から、フリーで家事代行の仕事を開始しました。もともと料理が好きだったことや、素材の味を活かした伝統的な日本料理をこども達に食べてほしいという思いから、料理に関する仕事を増やしていきました。

山品さん:私は5年前から料理代行の仕事を始めました。自分ができることで人の役に立ちたいと思ったことと、自分の子育ての経験から食育の大切さや食品添加物の問題について興味を持ったことがきっかけです。

__こども食堂をはじめたきっかけは何でしたか?

宇關さん:以前、こどもが通う学校での食育活動で、夜の家庭科室でこども達と料理を作る会を開催しました。メニューを決めて、だしを取ることから始めて…。そうやって皆で作って、出来上がるころには親御さんや先生も集まってくれて皆で食べました。その様子を見て、作るだけでなく皆で食べることも含めて食育はとても大切だと実感しました。両親が共働きの家庭が多い現代では、孤食の問題や、食事の栄養バランスが偏ってしまう問題が起こります。こども達はもちろん、大人も一緒に食べられる場を作りたいと考えるようになりました。

山品さん:こども食堂の話を聞き、宇關さんの思いや考えに共感しました。私も何かお手伝いしたいと思い、料理とInstagramの発信を担当しています。

宇關さん:こども食堂を始めるにあたり、品川区に相談し大和ハウス・アセットマネジメントさんとモリモトクオリティさんとお繋ぎいただき、「カスタリア目黒かむろ坂」のパーティルームをお借りできることになりました。2社の社員さんは毎月ボランティアで参加してくださり、来場した方の誘導や、チラシ配りをしていただくこともあるんです。場所の提供だけでなく、「まるごはんこども食堂」の運営にお力添えいただいて、本当に感謝しています。

大和ハウス・アセットマネジメント 担当者:もともと、「カスタリア目黒かむろ坂」には居住者の憩いの場としてパーティールームを設置していましたが、想定より利用者が少ない状況でした。弊社はESG活動(環境、社会、ガバナンスを考慮した企業経営)にも力を入れており、地域社会に向けた取り組みとしてパーティールームを無償で貸し出すことで何かお役に立てないか品川区に相談したところ、「まるごはんこども食堂」を紹介してもらいました。ボランティアで参加させていただくことで、社員のESGに対する意識も向上しています。

宇關さん:最初は15食くらいだったのが、今は80食を提供しています。お断りしてしまう日もあるため、160食を目指して体制を整える予定です。「まるごはんこども食堂」は私たちが自分自身を表現する場としても活動しているので、私たちの料理のファンになってくれたら嬉しいです。

「まるごはんこども食堂」Instagramより

新鮮な野菜料理とくつろげる空間で、来る人がほっとできる場所でありたい

__まるごはんこども食堂について教えてください。

宇關さん:毎月第3金曜日に「カスタリア目黒かむろ坂」のパーティールームで開催します。時間は16:30〜19:00で、入れ替わり制ではないので食べ終わった後もゆっくり過ごせます。イートインかテイクアウトか選べるので、「まるごはんこども食堂」のInstagramかお電話で予約をお願いします!お子さんがふらっと1人でも来られるような場所にしたいため、こどもは0円です(大人は600円)。

__提供するメニューのこだわり・特徴は何ですか?

宇關さん:食材を活かす味であること、目で見ても楽しい彩りにすることを心がけています。食材は、愛知県の東栄町で作られた自然栽培の野菜を直送してもらっています。メインの料理は事前に決めておきますが、それ以外は届いた野菜を見て当日に決めます。

山品さん:届いた箱を開けてみないと何が入っているかわかりません。「ジャガイモにもこんな種類があるんだ」など私たちも勉強になります。

「まるごはんこども食堂」Instagramより

宇關さん:メディアの影響もあり、色んな味付けの料理をしなきゃ、と考える人が多いと思うのですが、だし・塩・醤油・みりん・酒があれば、シンプルな工程でも素材の味を活かした美味しい料理ができるということを大事にしたいです。また、まるごはんのファンを増やすための活動でもあるので、価格以上のクオリティで作ることを決めています。

__来場される方からはどのような声をもらいますか?

山品さん:親御さんの「いつもは食べないのに…!」という言葉をよく聞きます。家では野菜はあまり食べない子でも「まるごはんこども食堂」では食べてくれることが多いようで、嬉しいです。大葉の天ぷらのようなシンプルなものから、にんじんの葉を使った米粉のチヂミなど、新鮮だからこそ美味しくて沢山食べたくなるのだと思います。

宇關さん:「全部食べたよ!」と空っぽになったお皿を嬉しそうに見せてくれることが一番の喜びであり、やりがいです。食べ終わったあとも皆さんくつろいでくれて、家のリビングにいるような風景です。私たちもほっとしますし、ここに来るこども・大人にとってこの空間を安全地帯だと思ってもらえているんだなと感じます。これからもそういう場であり続けたいです。

山品さん:こども食堂と言えど、日々忙しい親御さんが癒される場でもありたいと考えています。開催日を金曜日に設定したのも、平日の最後に良い夜を過ごしてもらいたい、という思いがあるからです。コロナ禍を経て、子育てにおいても地域の人同士のコミュニケーションが薄くなりました。子育てはストレスも溜まりますし、ご飯を食べながら話して「明日からまた頑張ろう」という気持ちになれる場所になれたらいいなと思います。

宇關さん:「まるごはん」の「まる」は「団欒」を意味しているので、食事を通した人と人との繋がり、関係作りができる場でいたいです。1年以上通ってくださっている方は「毎月1回、美味しい野菜料理を食べてエネルギーチャージができる場所」と言ってくれます。こどもも大人もほっとできる場所でありたいです。

「まるごはんこども食堂」Instagramより

__「まるごはんこども食堂」の今後について、皆さんの思いを教えてください。

山品さん:ご飯だけでなく、こどもも大人も楽しく遊べるイベントを増やしたいです。今はお子さんとその親御さんがメインですが、それ以外の世代の方も巻き込んで様々な地域の方と交流できる場にしたいと思います。

宇關さん:「こども食堂」以外の方法でも、地域の方と繋がりたいです。

モリモトクオリティ 担当者:今後も、地域交流の場として「まるごはんこども食堂」を継続できるようサポートしていきます。例えば、読み聞かせや宿題教室のような時間を作り、お子さんが集まる場になるような活用方法もあると思います。

大和ハウス・アセットマネジメント 担当者:当日にボランティアをしていると、皆さん「今日のメニューは何だろうね」と楽しそうに話している様子を目にします。この地域にとって意義のある活動だと思うので、今後も場の提供を通して地域に貢献できればと思います。

__大崎×五反田 LINK の読者(閲覧者)にメッセージをお願いします!

宇關さん:「まるごはんこども食堂」は「こども食堂」という名称ですが、どんな人でも利用できる場所です。安心安全の食材を使った、素材の味を活かした美味しいお弁当を食べにきてください!

(写真左から)宇關さん、モリモトクオリティご担当者、山品さん

(古郡 優)

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