杉野服飾大学やドレスメーカー学院、杉野幼稚園など、さまざまな学校を運営する「学校法人杉野学園」は、2025年度で創立100年を迎えます。品川区上大崎にキャンパスを置くドレスメーカー学院では、服飾教育を軸に、キッズスクールや古着のリユース活動など、地域とつながる取り組みを行っています。
今回は、同学院院長の渡邊千佳子さんに、活動内容や地域への思いについてお話を伺いました。
さまざまな活動を通じて、地域とのつながりを広げる
_創立100年を迎えられた心境をお聞かせください。
渡邊さん:私は今年度から院長に就任しました。創立して100年目という節目に立ち会い、先人の思いをしっかり次代につないでいかなければという責任を感じています。
創立者の杉野芳子先生は、1913年に単身ニューヨークへ渡り、洋裁の知識や技術を日本に持ち帰りました。その後、日本に洋装文化を広め、服飾技術の習得を通じて女性が自立できる社会をつくりたいという思いから、ドレスメーカー女学院(現ドレスメーカー学院)を創設しました。
「挑戦の精神」「創造する力」「自立する能力」という建学の精神は、今も変わらず受け継がれています。
_これまでどのような活動に取り組んでこられたのでしょうか。
渡邊さん:毎年、「ドレメ・キッズスクール」を開催しています。一般財団法人ドレスメーカー服飾教育振興会が主催しているもので、品川区と目黒区の小学校5・6年生を対象に、実際に洋裁で使用する道具を使った洋服作りを体験していただくイベントです。
20年以上続く取り組みで、今年も7月に開催しました。本学院の教員や学生が道具の使い方をサポートしながら、布地の裁断から始め、フレアパンツやショートパンツを制作するんです。最後は、自分が作ったパンツを着用してファッションショーを行い、その様子がケーブルテレビ品川でも紹介されました。
また、産経新聞社が主催する「ふくのわプロジェクト」にも毎年参加しています。古着の寄付を募ってリユースし、その収益金で、パラスポーツの支援につなげる活動です。本学院では、回収した古着を学生が一つひとつ仕分けてほつれの修繕などを行い、価格を決めギャラリーや学園祭で販売しました。こちらの活動も10年間続けています。


_印象に残っているエピソードはありますか?
渡邊さん:「ドレメ・キッズスクール」でファッションショーを行うときに、「出たくない」というお子さんもいらっしゃいます。私たち大人はつい、「テレビにも映るし、いい思い出になるよ」と思ってしまいますが、お子さんにはお子さんなりの「出たくない理由」があるんです。そういうときは、無理にステージに立たせるのではなく、お子さんの気持ちを尊重して、写真だけを撮るなど別の案を考えるようにしています。
こうした経験から、地域貢献活動は、一方的に思いを押し付けるものではないと実感しました。一人ひとりの目線に立ち、参加される皆さんが納得できる形を考えて活動することが大切です。その先に、地域とのつながりが自然と広がっていくものだと思います。
_これまでの活動を通し、うれしかったことはありますか?
渡邊さん:活動をきっかけに、地域の子どもたちが本学院に興味を持ってくれたことが一番うれしかったです。「ドレメ・キッズスクール」に参加したお子さんが、後日学園祭に遊びに来てくれたり、「卒業制作を見に行きたい」と言ってくれたり。洋服作りを体験したことがきっかけでファッションへの関心が芽生え、学校そのものにも親しみを持ってくれたのだと思うと、とても励みになります。
ものづくりの原点を忘れず、大崎の地に恩返ししていきたい
_活動を続ける上で、大切にしていることを教えてください。
渡邊さん:ドレメならではの「自らの手から生まれる素晴らしさ」を伝えられる活動を続けていきたいという思いがあります。どんなに便利な道具が増えても、ものづくりの原点は、やはり、手で生み出すこと。パソコンやスマホはあくまでもツールの一つです。まず頭で考え、手を動かして形にすることで得られる達成感は、何にも替えがたいものだと思います。
また、院長に就任したことで、改めて地域に支えられて学校が成り立っていると感じています。私自身も本学院を卒業して以来、この土地で40年近く教えてきました。地域を見渡すたびに、ここで学びを続けられることの重みを実感します。この大崎の地で長く愛されてきた学校だからこそ、地域に恩返しをしていく気持ちを忘れずにいたいと思っています。
_今後は、どのような活動を予定していますか?
渡邊さん:今年は、町会夕陽会の方から一般社団法人めぐもりさんをご紹介いただいたご縁で、新たに「街角クリスマス」にも参加しました。卒業制作の衣装をプロのモデルさんに着用してもらい、フォトシューティングを行う企画を実施しました。
また、本学院の学園祭では、町会夕陽会の子どもたちがファッションショーに出演します。学園祭は地域の皆さんにも開放しているので、ぜひ遊びに来ていただけたらうれしいです。
_最後に、大崎×五反田LINKの読者の皆さんへメッセージをお願いします。
渡邊さん:これからも、地域のために協力できることがあれば力になりたいですし、私自身ももっと地域のことを学んでいきたいと思っています。ぜひ一緒に、この街を盛り上げていきましょう。
(白根 理恵)

