子どもの孤食や貧困などの問題を解決すべく、低額(又は無料)で食事を提供する子ども食堂。子どもだけで入ることができる食堂であり、食事するだけでなく、「みんなで食べる楽しさや暖かさ」を提供する場となっています。品川区では「しながわ子ども食堂ネットワーク」に30を超える子ども食堂が名を連ね、地域の子どもたちに温かい食事を提供しています。今回は、「なるとキッチン子ども食堂」を運営する株式会社id food 代表取締役 中西貴昭さんにお話を伺いました。
大人も子どもも一緒に食事を楽しめる、子どもにとって「思い出の店」を作る
_中西さんが飲食業界のお仕事をされるきっかけは何でしたか?
中西さん(以下、中西):祖母が北海道在住だった縁もあり、大学時代から北海道物産展のアルバイトをしていたことがきっかけでした。全国の百貨店を回っていたのですが、その後、北海道物産展を1つの事業として独立しました。15年ほど北海道関連の物産展やイベントを行い、ファンがついたタイミングで店舗展開を始め、2017年に「なるとキッチン」第一号店を五反田にオープンしました。最初から、大人も子どもも好きで一緒に食べられるものを提供したいと考えていました。
_大崎・五反田エリアの魅力や、この地域にお店を出した理由を教えてください。
中西:繁華街ですが保育園や小学校が多いことが魅力だと思います。親子で食事を楽しめることはもちろん、今お店に来てくれているお子さんが、「小さい頃から来ていた思い出の店」として大人になっても来てくれるような店作りを目指しています。
できることからはじめたい。「なるとキッチン子ども食堂」が生まれたきっかけ
_子ども食堂をはじめたきっかけは何でしたか?
中西:子どもの笑顔は国の未来に繋がると考えており、店舗をオープンしたことをきっかけに、このエリアの子ども達を何らかの形で支援したいと考えていました。最初は、例えばクリスマスなどに、児童養護施設に「半身揚げ(鶏の半身を丸ごと揚げた唐揚げ)」を差し入れできないかなと思ったのですが、安全面でハードルが高いことが分かりました。その後、「子ども食堂」の活動を知り、まずはできることからはじめようと思ったことがきっかけです。
_「なるとキッチン子ども食堂」について教えてください。
中西:毎週月曜日の17:00~18:00の間に実施しており、メニューは、ザンギ(鳥の唐揚げ)を使ったどんぶりを提供しています。まずは週1から始めてみようと思ったのと、時間はお子さんが落ち着いて食事できる時間で…と思い設定したのですが、曜日も時間も気にせず、いつでも来ていただいて構いません!予約無しで、直接お店に来て大丈夫です。
地域の家庭と相互の関係性を作り、更に多くの子ども達を支援したい。
_子ども食堂を運営する中で、何か課題に感じていることはありますか?
中西:本当に支援が必要な子どもたちには届いていないのではないか、と感じています。「なるとキッチン子ども食堂」の情報を、子どもだけではなく保護者の方に届ける広報活動をしなければいけないと思います。そのために、一方通行ではなく相互の関係性を作り、家庭で情報がキャッチしやすい環境を作りたいですね。
_中西さまの夢や、今後やりたいことを教えてください。
中西:「子ども食堂」というと小学生〜中学生くらいのお子さんをイメージされると思うのですが、実は、18歳から20歳になるまでの2年間の子どもたちをどう守るか、ということも考えています。現在、児童養護施設では18歳で自立を求められることが多いんです。2024年4月に改正児童福祉法が施行され、自立支援の上限年齢が撤廃されますが、金銭的にも社会経験的にも問題を抱えやすいこの年齢の子ども達が、きちんと社会に出て自立できるような支援をしたいです。
日本は、平和で綺麗なとても良い国ですが、人口が減り続けている問題があります。現在、マレーシアやベトナムでの事業展開を計画していますが、海外展開し、更に利益を出し、日本の子ども達に向けて何か支援をしたいと考えています。また、もしかしたら展開先の海外でも、子ども食堂を実施するかもしれません。
<中西貴昭さん プロフィール>
・株式会社idfood 代表取締役
大学時代に北海道物産展のアルバイトをはじめるとともに、児童福祉に強く興味を持つ。北海道物産展の事業で独立後、2017年に「なるとキッチン五反田店」をオープン。その後、「なるとキッチン子ども食堂」をスタート。事業展開を通じ、「日本の子ども達の笑顔」を未来に繋げたいと考えている。
(古郡 優)