子どもも大人も楽しい、絵本の読み聞かせ

子どもも大人も楽しい、絵本の読み聞かせ
子どもも大人も楽しい、絵本の読み聞かせ
地域共創(大崎×五反田LINK独自記事)第155号 (2021.10.20発行)

絵本で世界が広がる

読み聞かせサークル「おはなしたまご」の立ち上げや、区内小学校の図書ボランティア活動に関わってきた石井澄子さん(大崎第一地区在住)は、「読み聞かせの楽しさをたくさんの人に知ってほしい」と語ります。

石井さんは長男の出産予定日1カ月前に破水し、早期胎盤剥離で緊急手術を受けました。母子ともに無事でしたが、長男8カ月の時にけいれんを起こし、医者には「発育や発達に支障が出るかもしれない」と言われたのだそう。

さまざまな苦しみを経験する中で、自分のできることをするしかないと思った石井さんは、もともと本が好きだったこともあり絵本の読み聞かせを始めました。長男は絵本に熱中し、1日に何十回も読み聞かせをせがんだそうです。

結局、大きな問題もなく成長し言葉の習得も早かった長男ですが、1歳を過ぎてから読み聞かせの会へ連れていくと動き回ってしまい、「参加は遠慮してほしい」と言われてしましました。

「小さい子はおとなしく座っていることより、絵本を楽しめればいいのでは」と考えた石井さんは、それを機に、誰でも気軽に参加できるサークルを知人と作り活動を開始。絵本を通じて世界が広がる喜びを子どもたちに伝えたいとの想いもありました。

長男と中学生の長女

子どもと同じ目線で、気楽に読んでみる

家で読み聞かせを楽しむコツは、気負わず自由に読むこと。いい絵本には力があるので、読み方の上手い下手は関係ないそうです。上手に読もうと声音を変えると、子どもは声に集中してしまい絵本の世界に入りづらくなります。

石井さんは、「大人のスピードで読まないことも大切。子どもが絵をじっくりと見られるよう、ゆっくり読んで、一呼吸置いてからページをめくってください」と話します。

子どもにとっては、親と同じ時間を共有するのが純粋にうれしいので、読んだ後に、感想を求めすぎないことも大事。感じたことを言語化するのは大人でも大変です。しつこくされるのがいやで、絵本を嫌いになる子もいます。

読み聞かせる時は、子どもを膝の上に乗せたり、となりに座ったりして、同じ目線にするのが良いそう。子どもが破りがちなカバーはあらかじめ外しておくと、ページもめくりやすくなります。

石井さんの長女は絵本にあまり興味を示しませんでしたが、自身が楽しみながらあきらめずに読み聞かせを続けたところ、長女も絵本が好きになったそうです。

集団への読み聞かせをすることも(コロナで休止中)

「JPIC読書アドバイザー」の資格を持つ石井さんは、さまざまな場所で読み聞かせをしてきました。心に響く物語を聞いて、大人の表情が変わることもあったといいます。「絵本の世界に入れば、心は自由にどこへでも行けます。子どもと一緒に大人も読み聞かせを楽しんでみてください」と呼び掛けました。

********************************************

読み聞かせをより楽しむために

絵本の選び方

小さい子どもは本をかじったり、破いたりしてしまうことがよくあります。まずは、扱いやすいボードブックを手に取ってみるのがおすすめです。

基本的には大人の好きな絵本を選べばよいのですが、子どもの好みと違う場合、興味を示さないことがあります。そんな時は、図鑑や科学絵本などを含めた幅広いジャンルから子どもに自由に選んでもらい、まずはお気に入りを見つけてあげてください。本の楽しさがわかってくれば、物語の絵本へと興味が広がるかもしれません。図書館司書に相談したり、おすすめ絵本の紹介サイトを参考にしたりするのもよいでしょう。

図書館を活用する

たくさんの絵本を楽しむには図書館が便利です。品川区の場合、期限2週間で1人20冊まで借りることができます。小さい子どもがいるとゆっくり本を選ぶのも大変ですが、図書館のホームページから予約をすれば、自宅近くの図書館に取りに行くだけで済みます。区によってラインナップが異なるので、ほかの区の図書館を利用するのもおすすめです。

聞いてくれない子には

石井さんの長女は小さな頃、読み聞かせをしても絵本に興味を持ちませんでした。石井さんは絵本を読む以外に、桃太郎などの昔話を語って聞かせたり、子どもを主人公にして一緒にお話を作ったりしたそうです。子どもにも読んでもらうなどして一緒に楽しんでいたら、徐々に本を読むようになっていきました。

子どもが小さいうちは親が忙しく、なかなか時間が取れないかもしれません。そんな時は無理をせず、絵本の読み聞かせを週末のお楽しみにしてみましょう。石井さんは現在、子どもたちと本を紹介しあう、本の感想を言い合うなど、本を通したコミュニケーションを楽しんでいるそうです。絵本の読み聞かせを聞いてくれない子にも、あきらめずに続けてみてください。

集団への読み聞かせ

品川区の多くの小学校や図書館では、ボランティアによる読み聞かせが行われています(コロナで休止中)。読み聞かせに興味を持った方は、活動に参加してみるのもよいでしょう。

集団で読み聞かせをする際の一番のポイントは選書で、下読みをしっかり行う、本に開き癖をつけておくなど、多少の知識と練習が必要です。図書館やJPICが開催する講習会へ参加したり、インターネットや書籍を見たりしてコツを学ぶこともできます。

絵本の世界をみんなで共有して一体感を味わえるのは集団ならではの魅力。石井さんは、子どもたちのわくわくした表情を見ると、自分までうれしくなるそうです。

(若松 渚)

タイトルとURLをコピーしました